Jr.の東方小説ブログ

新潟在住の東方ファンが自筆小説を公開するブログです。 週一程度の公開を予定しています。あとは徒然なるままに雑談でも。 ニ、三日に一度更新出来たら理想ですね。

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短編「節分クライシス」

前回の小説記事から一週間が経とうとしています。

……一週間短いなぁ。

週半ばでとあるゲームのレビューをしようと思っていたのですが、なんだか形にならずに今に至ります。

とりあえず先に節分が来たので前々からお伝えしていた節分ネタでも。

個人的にはかなりハイテンションな内容になったと思うのですが、世間一般的には普通かもしれませんね。

ちょっとはっちゃけました。私の一貫した「原作に忠実に」という方針からややずれましたが、たまにはこういうのもよいでしょう。

書いてて楽しかったですし。楽しくて書きすぎましたし。

いつもより長めかもしれません。基本ものぐさな私がなぜここまで頑張るのか自分でも謎ですが、とりあえず本文を読んでいただきましょう。

続きからですどうぞっ



 雪解けとともに、大地からは春の足音が聞こえるようになってきた。
 そこらに残った雪を掘り返せば、光の届かぬ世界で育ってきたフキノトウが目を細めるだろう。
 明日は立春。暦の上では春となる。
 とはいうものの、最近は暦通りに季節が流れることが少なくなっている。頻発する異常気象は、人々の心の闇を少しずつ、しかし確実に深くしていた。
 特にここ幻想郷では、冬が長く続きすぎたり、あるいは季節の変わり目が無くなり四季折々の花が咲き乱れたこともあった。
 しかし今年は、大きな異常気象も無く無事にに立春が訪れそうだ。『当たり前』というありがたみが分かるのは、異常事態を何度も経験してきた幻想郷の住民だからこそなのだろう。
 ところが、幻想郷の人間たちは気づいていなかった。小さな変化が――妖精たちの異常“気性”が始まっていたのを。



「節分って知ってる?」
 霧の湖の畔に数人の仲間を集め、さも『自分はこんなことも知っているぞ』と言いたげな顔つきで問いを発したのは、冷気を操る程度の能力を持つ妖精、チルノである。
 その問いを受けたルーミア、ミスティア、リグルの三人は、声をそろえて解を出した。
『うん知ってる』
「…………」
 がっくりと項垂れ、負のオーラを顕現させるチルノ。しかしすぐに回復し、話を続ける。
「誰でも鬼を追っ払うことのできる特別な日よ! この期を逃して最強を語ることはできないわ!」
「いや別に最強になろうとは……」
 ミスティアが本音を発しようとしたが、空気を読んで止めておいた。
「どこかから豆を調達して、鬼にでもぶつけるのかい?」
 そう聞いたリグルに対し、
「それもいいけど、今の幻想郷に鬼はいないらしいじゃない。だから純粋な鬼じゃなくて、もっと身近な鬼を退治するのよ」
 ちなみに現在の幻想郷にも鬼はいる。しかし、かつてのような活動はしておらず、他の妖怪たちと共存しているのだ。
「身近な鬼?」
 ルーミアが首を傾げる。思考力の乏しいルーミアでは、チルノの言わんとすることが理解できなかったのだろう。
「ええ。とっても身近な……すぐそこに住んでるじゃない。吸血鬼よ」
 ビッ! と湖の対岸に佇む屋敷を指さす。湖と、また幻想郷そのものとすら不釣り合いなほど、その屋敷は紅かった。



「あの妖精どもも大概だけどさ、まんまと豆を持って行かれたここの警備はどうなってんのよ?」
「申し訳ありません。少し目を離した隙に……」
 紅魔館厨房には、この屋敷の主人であるレミリア・スカーレットとその従者、十六夜咲夜の二人がいた。
 屋敷は先ほど数名のコソ泥による被害に見舞われ、節分用に備蓄してあった炒り豆が奪取されてしまった。
 鬼の住む屋敷でも豆まきは行われる。むしろ紅魔館では、対鬼用訓練として、立春前に限らず各季節の節目には欠かさず開催されていた。
「豆はまだ在庫があります。炒り直しますので今しばらくお待ちください」
「ふうん。替えがあるならいいけど。まあ私としちゃ恵方巻きが持って行かれなかっただけマシかしら」
 レミリアが調理台を見やると、作りかけの恵方巻きが置いてある。咲夜がこれを作るのに集中していたときに盗まれたそうだ。
「それで、いかが致しましょうか?」
「いかがって……何よ。炒り直すんじゃないの?」
「いえ、強奪犯の方です」
「ああ、成る程ね。よし、思う存分仕返ししちゃいなさい」
「かしこまりました」
 そう返した咲夜の口元は、獲物を追い込んだ虎のようだったと、あるメイド妖精は語ったそうな。



 炒り豆の強奪に成功したチルノたちは、この後如何にして吸血鬼を退治するかの作戦会議を行っていた。
「やっぱり突撃あるのみよ! 裏からコソコソなんてガラじゃないわ!」
 チルノの発言はつい先ほどの行動を全否定したものだったが、それに突っ込む者は誰もいない。リグルが挙手をして、
「でもさ、この豆って鬼にしか効かないんでしょ? だったら他の使用人なんかに取り囲まれる可能性もあるんじゃない?」
 リグルの言い分はもっともである。しかし、それ以前にあの門番を突破できるかすら怪しいということまでは考えが至らなかったようだ。
「あそこのメイド長は一筋縄じゃいかないっていうし、下手すると私たち全員で取り囲んでも返り討ちに遭うかも……」
 ミスティアも付け加える。チルノは「むむ……」と唸ってしまった。リグルはそこに畳み掛けるように、
「裏口を使う手はさっき豆を頂いた時にばれちゃってるからね。今は警備が厳重だと思うよ」
「じゃ、じゃあ……煙突よ! 煙突から侵入すればいいじゃない!」
「煙突……」
 リグルは屋敷の煙突を見る。節分とは言え、まだ紅魔館の暖房はフル稼働中だ。あの煙突を潜るということは、体中真っ黒に意味する。
「お洋服が汚れそうだわ……」
 露骨に嫌な顔をするミスティア。しかしチルノには無問題だったようで、
「服が汚れるぐらい何よ。私たちは自らの心を汚してでも、あの屋敷に蔓延る鬼を退治しなければならないのよ!」
「そーなのかー?」
 豆をつまみ食いしながら疑問符を浮かべるルーミア。
 どうやらチルノの中では、話が勝手に壮大なスケールとなってしまっているようだ。冷静に分析すれば、これから彼女たちが行うことは『奪った豆を家じゅうにまき散らす』という迷惑行為に他ならない。大義も何もあったものではないのだ。
「そうなのよ。正面突破も裏口も使えないんじゃ、あとは煙突ぐらいしか入れないじゃない。手段を選ぶ必要はないわ」
「やれやれ……しかたないね。ここまで来たんだから、その方法で突撃しますか」
 リグルは諦めたように首を振る。ミスティアも溜息をつきながら、どうやら諦めたようだ。ルーミアは特にどうなろうと構わないようで、一人炒り豆の試食会を開いていた。
「そうと決まれば、門番に気づかれないよう裏から回って、侵入するわよ!」
『おー!』
 高らかに宣言するチルノ。彼女たちの節分が、今始まる。



「バレバレなのよね。所詮は妖精の考えることだわ」
 紅魔館時計台前。チルノたちが目指す煙突とは反対側に位置する屋上である。
 新たな炒り豆を用意した咲夜は、豆の入った枡を片手に話し合うチルノたちを観察していた。
 咲夜の手には、普段愛用しているナイフとは全く異なる武器が握られている。
 全長は彼女の身の丈ほどあり、全体が黒く底光りしている。幻想郷ではあまり知られていない武器だが、外の世界では一般的に『ライフル』と呼ばれているようだ。
 ライフル。遠距離射撃に用いられる銃で、その種類は対人から対戦車まで様々である。総じて言えることは、標的を射程圏内に収め、尚且つ相手がそれに気付いていないのであれば、必殺の武器になるということだ。
 安全装置は解除され、いつでも狙撃できる状態になっていた。ちなみに弾は炒り豆である。流石に実弾を使うほどの趣味はなかったが、ゴム弾ではなく豆弾を使うあたりに咲夜の怒りが込められていた。当たるとすごく痛い。
 立ち膝で座り、スコープ越しにチルノたちを見やる。何かを言い合ったと思ったら、四人で拳を振り上げ一致団結の様相を呈している。
「早速だけど、出ばなを挫かせてもらうわね」
 目標の側頭部に照準を合わせ、躊躇せず引き金を引く。スパァン! という乾いた発射音と共に、目標が倒れ伏すのを確認した。



「ミ、ミスティアーッ!」
 突然倒れた戦友に驚愕を隠せないリグル。ミスティアは何が起こったのか判らない様子で目を白黒させている。その有様たるや、鳩が豆鉄砲を喰らったかのようだ。
「ちょっと、いきなりどうしたのよ! 大丈夫なの?」
 チルノはミスティアに駆け寄り、息があるかを確認する。大事には至っていないようだが、作戦に参加することはどう考えても不可能だ。早くも戦力が激減してしまった。
「ここは危険だ。近くの森に避難しよう」
 そういったリグルがミスティアを運ぶために近寄ると、元いた場所からビスッ! という音がした。
「なんだ!?」
 周囲を確認しながら、音のした地面を観察する。すると、表面が不自然に抉れている個所が見つかった。指で掘り返してみると、
「――熱っ!」
 中から黒焦げの豆が見つかった。
「これはっ……! チルノ、ルーミア、すぐに森へ退避を! 我々は狙われ――」
 その先を、チルノとルーミアは聞くことができなかった。

 バスッ、という鈍い音とともに、リグルもまた地に沈んだからだ。

「リグルっ!」
 駆け寄ろうとするルーミア。しかしその手をチルノが掴み、そのまま全速力で森へと走った。
「離してっ! このままリグル達を見殺しには――」
「今はとにかく逃げるのよ! 森にさえ入れば狙われない。あのままあそこに留まっていたら、あたしもルーミアもやられるわ!」
「――くっ!」
 断腸の思いで逃げ出すチルノとルーミア。背後から何度かビシバシと音が聞こえたが、一心不乱に逃げ続け、何とか森に飛び込んだ。



「すばしっこい連中ね……」
 スコープに片目を当てたまま呟く咲夜。そもそもライフルなど日常的に使うものではないので、逃げ回る敵に命中させるほどの技術を持ち合わせていないのだ。
 持ち前の能力で時間を止めれば確実なのだが、大した力も無い妖精や妖怪相手に全力を尽くすのは彼女のプライドが許さないので、時間操作は封印することにしている。
 現在目標を二名沈めたが、残る二名は森に逃げ込んでしまった。木々が邪魔になって狙うことができないし、闇雲に撃っても弾の無駄使いとなるだけだ。
(敵は必ず復讐にくる……対抗手段を取っておくべきね)
 正面口には美鈴がいる。侵入するなら森をグルリとまわった裏口からが妥当だ。しかし裏口は先ほど侵入した時に使った経路。同じ手を使ってくるものだろうか。
(普通は別の手を考えるだろうけど……妖精の考えることは解らないわね)
 相手の知能が低い分、先読みはしにくい。臨機応変に対応する判断力が求められるだろう。
 少なくとも、そういった状況下でライフルは活用しにくい。咲夜は時計台の文字盤に立てかけてあったライフルのケースを開き、手元のライフルをしまうと同時にもう一つの銃器を取り出す。
 ライフルよりも大分短い銃身。拳銃ほど小さくはないが、圧倒的に小回りがきく。連射性にも優れていて、入り組んだ地形での中距離や近距離戦で威力を発揮することができる。
 サブマシンガンと呼ばれるこの銃にも、やはり実弾の代わりに炒り豆が装填されている。威力はライフルに劣るが、当たるとすごく痛い。
「さてと……」
 準備は整った。妖精一匹と妖怪の端くれがどこまで耐えられるか定かでないが、仲間を失った兵は死に物狂いで突撃してくることがある。決して気を抜くわけにはいかない。
(ここからが本番ね……)
 彼女の節分が、今始まる。



 霧の湖に面する針葉樹の森を、チルノとルーミアはひたすら走っていた。
「ねえ……ここまでして……屋敷に突入する必要が……あるの?」
 やや息を切らしながらルーミアが問う。彼女の前を走るチルノは振り返らずに、
「当然でしょ! 戦友を二人も失ったんだから、この作戦を成功させることだけが唯一最高の弔いなのよ!」
「そ、そうなのかー?」
 念のため付け加えるが、ミスティアとリグルは軽い失神に止まっていて命に別状はない。そろそろ目を覚ます頃合いだろう。
 完全に役に染まりきっているチルノは、もう後に引いたりはしない。あの屋敷に住む吸血鬼に一泡吹かせるまで、決して諦めない。
「着いたわ! ここから侵入よ!」
 遠回りをしたせいで随分長く走ったが、木々の隙間から覗くと、紅魔館の正門がそびえていた。



「各メイド部隊に伝達、総員対弾性魔方陣を展開し、侵入者の迎撃に当たりなさい」
「ラジャ」
 近くにいたメイド妖精に伝令を出させ、咲夜は舌打ちをしながら正面玄関に走り出した。
 裏口から来ると想定して待機していたのだが、完全に読みが外れてしまった。たとえ無策だとしても門番のいる正面から突入するとは考えにくかったのだが、その結論を出すためには確認しなければならないことがあったのだ。
(美鈴には、それなりの仕置きをしておかないとね……)
 おそらく、いやもう確実に、美鈴は仕事をさぼって眠りこけていたのだろう。
 とは言えそれを恨んでも始まらない。今やるべきことは侵入者の排除のみだ。
 エントランスホールから建物内部への出入り口となる扉は現在封鎖されている。勿論侵入者を中へ入れないためだ。
 板チョコのような大きく分厚い扉に耳を当てると、その向こうで戦闘が行われているのが分かる。メイドたちの弾幕が放たれる音と、侵入者の『おにはーそと!』という間の抜けた掛け声である。
 ドアに背を預けたまま一度深呼吸し、サブマシンガンを持ち直してから背でドアを押して突入する。
 銃を構え、目標と仲間の位置を確認しようとしたが――

 ――エントランスホールは制圧されかかっていた。

「おにはーそとー!」
 やや我を失っている感が漂う様子で氷の弾幕をばら撒く妖精、その反対側で確実にメイドを仕留めていく妖怪。てっきり豆を撒いているのかと思ったが、普通の戦闘となっていたようだ。
 成る程それならメイド妖精たちが苦戦するのも頷ける。彼女たちは実戦経験が浅いので、実弾の飛び交う戦場では恐れを成してしまったのだろう。
 二人の侵入者がこちらを振り向く。これまでとは違う敵と思われたのか、二人同時にかかってきた。
「この屋敷に攻め込んだこと、公開しなさい!」
 銃口を目標に向け引き金を引く。正確に打ち抜くよりも、数を撃ってヒットさせる方が効率が良い。あまり正確に狙わずに、敵全体を覆うように弾幕を描く。しかし相手は軽々と避けながら、
「ルーミア、二手に分かれるわ! あんたは突破口を開いて!」
「いえっさー!」
 ルーミアと呼ばれた妖怪が大きく旋回し、先ほど咲夜の入ってきた扉へと向かう。
「っ! させるものですかっ!」
 すかさず照準をルーミアに向けようとするが、
「あんたの相手はあたしよっ!」
 妖精が割って入って邪魔をする。見事なコンビネーションだが、感心している暇はない。ルーミアを扉の向こうに行かせるわけにはいかないのだ。
「堕ちろ、蚊蜻蛉っ!」
 互いの距離が三歩程しかないのに、空中でヒョイヒョイと避けられ全く当たる気がしない。
(銃口の動きを見ているのかっ……!)
 日常的に弾幕の飛び交う幻想郷にいるからこそ成し遂げられる業だろう。余裕が出てきたのか、相手は両手に冷気を溜めこみ、
「氷符『アイシクルフォール』!」
 両の手から放たれる氷弾に挟み込まれる。一瞬マズい、と思ったが、冷静に見ればこの弾幕は回避が容易である。
(左右が駄目なら、前へ――)
 左右の手からこちらに向かって放たれるので、敵正面はガラ空きなのだ。そこに潜り込み、至近距離から豆弾を喰らわせれば一丁上がりである。しかし――
「掛ったわね! 同じ失敗は繰り返さないのよ!」
 左右の手を中央に移して、真正面から弾を放つ。密度の上がった弾幕は、最早氷の塊とも言えた。ちなみに同じ失敗ということは、前にも懐に潜られたことがあるのだろう。
「――くっ!」
 相手を侮っていたのが災いした。至近距離過ぎて避けることができない。ここで墜ちるのか、という考えが頭を過ったのだが――



「ここまで上手くいくと拍子抜けだね」
「チルノちゃんのおかげかしら」
 目を覚ましたリグルとミスティアは、すでにいなくなっていたチルノとルーミアを追って屋敷に侵入していた。
 どうやら正面玄関の方で派手に戦闘が行われているらしく、裏口には誰も人がいなかった。
 おまけに内部の妖精メイドも皆エントランスホールに出払っているようで、現在二人はレミリア・スカーレットの自室前にいた。
 館の主は昼間なので寝ているかもしれないが、先ほど豆を奪取した時見つかっているので起きている可能性の方が高いだろう。
「まともに相対できる相手じゃないのは確かだし……」
「パッと入ってパッと撒いたらすぐ退散しましょう?」
「それがいいかもね」
 片方がドアを開け、もう片方が炒り豆を枡ごと部屋に放り込む。それと同時に一目散に脱出する。そういう算段だった。

 吸血鬼の方からドアを開けてくるまでは。

「外が騒がしいわね――って、」
『…………』
 リグルとミスティアは、以前にこの吸血鬼と対面したことがある。そう、それは偽りの満月の夜だった。
 その時の吸血鬼は、自分達をいともあっさり叩きのめしていて、その強さは今も健在なのだろう。
 つまり――
『ごっ、ごめんなさーい!』
 枡を放り投げ、全力で逃げ出すリグルとミスティア。いまだ事情が呑み込めないレミリアだったが、

 大量の炒り豆を頭から被った時、すべてを理解した。



 チルノの姿が真横にぶれた。
 てっきり止めを刺されるのだとばかり思っていた咲夜は、この段階でこの妖精が目で追えないほどの高速移動をしたことに驚きを隠せなかった。
 少し遅れて、バァン! という衝撃音が聞こえてきたとき、この妖精は回避したのではなく真横に吹き飛ばされたのだと理解した。
 壁に大穴を作った妖精は、運動エネルギーを全て発散させたのちポトリと床に落ちた。
 妖精が飛ばされた反対方向を見ると、
(お嬢様……?)
 咲夜が護るべき主人、レミリア・スカーレットが立っていた。
 明らかに激怒している表情で部屋を見渡し、もう一人の侵入者、ルーミアと目が合った。
 睨みつけられたルーミアは『ヒィッ!』と顔を強張らせる。既に気絶してしまいそうなほど怯えていたが、レミリアは容赦なく深紅の槍を突き刺す。ルーミアは倒れ、動かなくなった。
「急所は外してあるわよ。妖怪の回復力なら命に別状はないわ」
「は、はあ……」
「咲夜っ!」
「はいっ!」
「これは一体どういうことなの?」
「ええ……申し訳ありません。賊の侵入を許してしまいました」
「炒り豆を頭からぶっかけられたんだけど」
「そ、そうなのですか……災難でございましたね」
「……ふん、まあいいわ。恵方巻きの支度をしなさい。それが終わったらここの片づけね」
「かしこまりました」
 主人に怒られることは、メイドにとって何よりも辛いことである。せめてもの償いのため、咲夜は急いで恵方巻きの支度にかかった。
 サブマシンガンから弾倉を取り出し、安全装置を掛ける。
「ちょっと待って咲夜」
「何でしょう?」
「あんたの持っている銃は何?」
「これですか。外の世界の技術を元に、河童に作らせたものです。幻想郷内では最新鋭でしょう」
「ふうん。その銃、今後は原則使用することを禁ずるわ」
「何故ですか? 今回は威力を十分発揮できませんでしたが、道具は使いようです」
 割と気に入っているらしいサブマシンガンを両手で抱え問う。レミリアは一つ溜息をついて、
「一秒間に数十発もの炒り豆を発射する装置なんて、この世に必要ないわ」
「……左様でございますか」
 それもそうかと思った。自分がレミリアの立場だったら、間違いなく使用を禁止していただろう。



 紆余曲折あったものの、妖精たちによる紅魔館襲撃事件はこれにて幕を閉じた。
 襲撃者及びメイド妖精が多少の怪我を負っているが、いずれも命に別状はないので被害としてはよい方だろう。
 この話を聞きつけた人間や妖怪が、『その銃を売ってくれ』と何度も交渉に訪れたが、レミリアは決して首を縦に振らなかった。当然である。
 チルノたち襲撃者は、四人でエントランスホールの片づけをするよう命令され、渋々それを行っている。
 紅魔館では年に四回節分行事を行っているが、今後もこの調子が続くのだろうか。他の妖怪たちも、ともすればチルノたちすら再び、節分にちなんで紅魔館を襲撃するのが定例になるのかもしれない。
 そう想像した咲夜だが、それなら自分は迎え撃つのみである。むしろその方が楽しいだろう。
 主人に若干の被害が出てしまったことは十分反省しなくてはならないが、咲夜も今回の節分を大分楽しんでいた。鬼が来るだとか、それに対抗するだとか、様々な理由から年中行事は執り行われるが、結局根底にあるのは、それが楽しいからなのではないだろうか。
 そう考えながら、恵方巻きを配膳する咲夜なのだった。

※ あちこちに散らかった豆は、スタッフ(主に野鳥)が美味しく頂きました。



……長かった。

最終チェックをするにも結構な時間を要したので、読者の方にはさぞかしよい時間つぶしとなったことでしょう。

今回は節分がテーマですが、最終的には紅魔館でドンパチあっただけで節分とはかけ離れた内容となっています。

しかも外の世界の銃器が普通に使われているという。これを出して良いものか少し悩みましたが、よく考えたら東方儚月抄において月面で銃器が使用されていたのでOKかなと判断しました。

私はそこまでミリタリ方面に詳しくないので、使用された銃器の詳しい型番まで突き詰めた設定を作っていません。

雰囲気としては「とある魔術の禁書目録」における「妹達」が使用した銃器と同じイメージで。「ライフルがこんなに大きいはずがない」と突っ込みを入れた方にはそれで納得していただければよいかと。3巻にて御坂妹が使った「メタルイーター」がモデルです。

この作品は書籍「東方文花帖」に収録された記事の一つから派生させたものですが、そちらを簡単に解説しますと、季節の節目に紅魔館で節分が行われたが、メイドたちがお互いに豆をぶつけ合うカオスな物だった、という内容です。

一応この話でも、エントランスの片付けが終わったのち改めて豆まきが行われるのですが、そのへんは読者様の脳内補完にお任せします。程よい妄想力は人生を楽しくしますよ。

節分ということで、私の家でも簡単な豆まきをして恵方巻きを食べました。

ちなみにこのとき撒く豆は地方によって異なるようですね。私の家では落花生を撒きました。

小説に出す豆は比較的一般的な炒り豆にしましたが、落花生でもそれなりに面白かったかもしれませんね。咲夜が落花生を発射するたび、有機物の薬莢が舞う!

さて、次回のアップは約一週間後。連載中の中編もそろそろ大詰めです。ご期待下さい。



……その次ぐらいの更新になるととあるビッグイベントがあるのですが、これに便乗するか否かは考え中です。

便乗するとしても、リア方面で書くのか非リア方面で書くのか。
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[ 2013/02/03 21:36 ] 東方小説 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

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