Jr.の東方小説ブログ

新潟在住の東方ファンが自筆小説を公開するブログです。 週一程度の公開を予定しています。あとは徒然なるままに雑談でも。 ニ、三日に一度更新出来たら理想ですね。

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短編「癸巳の守矢」

皆様、あけましておめでとうございます。

新しい年が幸多きものとなるよう心よりお祈り申し上げます。



……でもこの記事を書いている段階ではまだ年が明けてないという出オチっぷりですが。

年末年始は親の実家に帰省していて更新が困難ですので予約投稿とさせていただきました。ご了承ください。

さて、小説ブログと名乗っているからには新年一発目も小説です。お正月ネタを用意してまいりました。

実はこの話の一部には昨年の正月に思いついたネタも入っています。ずいぶん温めたものだと我ながら感心しますが、温めたというより放置したという表現が正しいような気も。

そんなわけで昨年末の忙しい時期をなんとかやりくりして書き上げた短編です。ちなみに時系列はまさに今日。幻想郷にも新年が訪れます。

本編は続きから、どうぞっ!


 昨夜までの吹雪は跡形もなく消え去り、真冬のこの地域としては珍しい快晴の朝だった。
「うーん、気持ちいい」
 境内で大きく伸びをしているのは、ここ守矢神社の巫女であり神様でもある東風谷早苗。もうすぐ日の出という時間でまだ西の空は濃い青に染まっているが、日頃から早起きに慣れている早苗にとっては既に活動時間だ。
 睦月の一日。すなわち元旦である。妖怪の山の頂上付近に位置するこの神社には、いち早く初日の出を拝もうとする人間、妖怪がちらほら訪れていた。
「早起きは三文の得、ね」
 早苗に話しかけたのは、守矢神社の神様の一人、八坂神奈子。
「あ、お目覚めですね。明けましておめでとうございます」
「おめでとう早苗」
「あの、三文の得とは?」
「ええ、一年の計は元旦にありと言うでしょ? それとさっきのことわざを組み合わせると、元旦に早起きすることで合計千九十五文も得できるのよ」
「そ、そうなのですか……」
 それは初耳だった。
「諏訪子はまだ起きてないのかしら」
「そのようですね。もうすぐ日の出ですし、お声掛けしてきましょうか」
「お願いね。その方が神社全体で得する金額が大きいわ」
 後半の台詞は確実に不要だったが、初日の出はやはり皆で拝みたい。早苗は寝室に向かい、閉め切られた部屋の外から声を掛けた。
「諏訪子様、もうすぐ日の出ですよ。そろそろ起きてください」
「うにゃ……もうちょっと」
「もうちょっとってどのくらいですか」
「蛙が冬眠から覚めるまで」
「はいはい、起きてください」
「うむむ……いいじゃない……初日の出ぐらい。もう何千回も拝んできたし」
「今年の初日の出は過去にも未来にも一度しか訪れませんよ? それに今日は朝から忙しくなるのですから」
 そう。神社周辺で日の出を今か今かと待ち構えている群衆は、やがて神社の参拝客へと変わる。元日の早朝に苦労して山の頂上まで登ってきたのだから、ついでに初詣を済ませない手はない。
「忙しいったって……どうせ殆ど神奈子と早苗の仕事じゃん……私は正月休みー」
「……もうっ、失礼しますよ」
 痺れを切らせた早苗が障子戸を開くと、諏訪子は全身に布団を被せてうずくまっていた。まさに蛙の冬眠である。
「諏訪子さまー、起ーきーてーくーだーさーいー」
 布団の上から少し強めに揺すると、諏訪子は「あーうー」などと呻きながらようやく這い出てきた。
「明けましておめでとうございます」
「むー、おめでたいけどおめでたくない」
 純白の寝巻を着込んだ諏訪子は眠そうに目を擦る。普段はここまで朝に弱いわけではないのだが、昨晩は遅くまで宴会を開いていたので睡眠時間があまり取れなかったようだ。
「もうすぐ初日の出ですよ。着替えたらすぐに来てくださいね」
 そう言い残して部屋を出た早苗。神奈子の元に戻り少し待つと、諏訪子も普段着に着替えてやってきた。
 それとほぼ同時に、東の山際から太陽が姿を現し始める。集まっていた人間や妖怪たちは合掌して懸命にお祈りをし、早苗たち神様トリオは徐々に明度を増してくる太陽に目を細くする。
 早苗は、直接的なお祈りこそしないものの、今年一年が平穏に過ごせるよう心の中で願うのだった。



 初日の出が終わると、それを拝んでいた人間および妖怪はそのまま守矢神社へと赴き、初詣を済ませていく。
 もともと立地の関係で参拝客の少ない守矢神社としては、元日は年内でも有数の稼ぎ時だった。
 次々と訪れる参拝客。各々が気持ちばかりの賽銭を投げ入れ、商売繁盛や恋愛成就を願う。声に出さないが、その内容は神奈子と諏訪子にはしっかり聞こえていた。神様が標準装備している能力の一つである。
 二人の神様は、人々の願いに見合った幸運を授けることで信仰を得ている。直接願いを叶えるのではなく、願いが成就できる程度の幸運を授けることで作業を短絡化しているのだ。
 一方早苗は御神籤などの販売を担当する。彼女は奇跡を起こす程度の能力を有しているが、ここでは実際に奇跡を起こすのではなく、参拝客がどの程度の奇跡に恵まれるかを測定し、それに見合う階級“だけ”が入った御神籤を引かせる。インチキと思われるかもしれないが、ランダムで引かせるよりこのやり方の方が圧倒的に的中率が上がるのだ。結果的に「よく当たる」と評判になる。
 朝の時間帯は初日の出を拝みに来た客が中心だが、日が昇るにつれ山の麓に住む妖怪や、里の人間(ごく一部)も参拝に訪れてきた。
『今年も一年、山の安全を護れますように……』
 とある白狼天狗の願いである。
「あまり護り過ぎると参拝客が減るんだけどねぇ」
「何事もほどほどが大事だよー」
 ほどほどの幸運が与えられた。
『今年も一年、面白いゴシップ記事が書けますように……』
 とある鴉天狗の願いである。
「うちの迷惑にならない記事なら構わないんだけれど」
「見境無いだろうね。放っといてもいいと思うよ」
 特に幸運は与えられなかった。
『お嬢様方がもう少し常識的な生活をしてくれますように……』
 とあるメイド長の願いである。
「それは直接あの姉妹に言った方が良いんじゃないかしら」
「面と向かって言えないこともあるもんだよ。その優しさにサービス」
 ちょっと多めの幸運が与えられた。
『今年こそは、みんなをアッと言わせられる発明ができますように……』
 とある河童の願いである。
「いい意味なら応援しましょう」
「いい意味ならね」
 そこそこの幸運が与えられた。
『今年こそ、あの人間たちをギャフンと言わせてやるんだから!』
 とある妖精の宣言である。
「せいぜい頑張って頂戴」
「神頼みをしに来る時点で何かおかしいと気づかないのかな」
 特に何も与えられなかった。
『今年は私の神社に沢山参拝客が来ますように……』
 とある巫女の願いである。
「なんで他の神社に祈願しに来てるの!?」
「元旦でも人が来なかったんだろうね……」
『ていうかあんた達! 中にいるのは分かってるんだから、出てきなさい!』
 急に声を荒らげる紅白の巫女。立て籠もった犯人を追いつめるかのような口ぶりに、しかし神奈子と諏訪子は顔を合わせ、ふふっと笑った。
「暇潰しに付き合ってあげよっか」
「そうね。そろそろ参拝客も減ってきたみたいだし、何しろ退屈になってきたわ」
 意見を一致させ、表に姿を現す神奈子と諏訪子。対する紅白の巫女――博麗霊夢は、何故か両手を腰に当て仁王立ちをしていた。
「何か御用かしら」
 代表して神奈子が問う。
「よくしらばっくれてられるわね。今日は天下のお正月だってのに、私の神社には一向に参拝客が訪れない。あんた達が何か妨害してるのだと考えるのが自然じゃない!」
「随分な言い草ね。私たちは特別何もやってないわ。まあここは初日の出が見られるっていう立地条件もあるし、あんな東の外れにある神社よりは人が来やすいのかもしれないわよ」
「っ、言ってくれるじゃない。今の台詞は聞き捨てならないわ。どちらの神社が幻想郷にふさわしいのか、今一度弾幕勝負で決めようじゃない!」
 少しでも意見が対立するとすぐ実力勝負に持って行こうとする。霊夢の悪い癖だ。もっとも、この性格は霊夢だけに限った話ではないのだが。
「あら霊夢さん、自分の神社は良いんですか?」
 そこへ仕事を一段落させた早苗がやってきた。何気ない一言だったが、それが霊夢の闘争心に火を点ける。
「良いわけないわよ! あんたらに奪われた私の信仰、きっちり返してもらうんだから!」
 霊夢の宣言により、三対一の弾幕勝負が幕を開けた。周りにポツポツ残っていた一般人は一斉に非難し、妖怪たちは距離を取って観戦する体制に移る。
 三人の神様を相手に一歩も引けを取らない霊夢。互いの弾幕がぶつかるたびに火花が散り、観衆のどよめく声が聞こえてくる。
 一進一退の攻防を繰り広げていたが、その時早苗はふと気づいた。
 最初は元旦から弾幕勝負をする羽目になるなんてと思っていたが、これこそが幻想郷らしい正月なのかもしれない、と。
 人数のハンデもあり霊夢は多めのスペルカードを所持している。勝敗はなかなか決まらないだろう。しかし、この弾幕戦を楽しめるだけの心の余裕があれば決して苦にはならない。
 今年も妖怪退治や異変解決ができるように。そしてこの試合を勝利に導けるように、早苗はスペルカードを掲げる。
「乱れおみくじ連続引き!」
 複数の御神籤を霊夢に投げつける。それらは着弾と同時に炸裂し、大吉や末吉などの運勢を示すだろう。吉と出るか凶と出るか、年初めの運試しである。
 放物線を描いて襲い掛かる御神籤に、霊夢は回避でなくスペルカードで対抗する。
「夢想封印 瞬!」
 放たれるお札や陰陽玉が御神籤と激突して、閃光を放つ。そして現れた今年の運勢は――



新年初短編でした。

……いえ、続きませんよ。なんだか御神籤の結果を言ってはいけない気がしたので、あえて微妙なところで区切りました。結果は読者様の脳内補完ということで。そういう楽しみ方もいいと思いますよ。

今までにない途切れ方ですが、「キノの旅」シリーズからヒントをもらっています。

このシリーズではプロローグとエピローグが前後編になっていて、しかもその順番がプロローグ:後編、エピローグ:前編というふうに逆になってるんです。

これが最初に読んだ時カルチャーショックでして。読みにくいなんてことは一切なく、むしろ順番を入れ替えることでそのストーリーは無限大の世界を生み出します。

いかに読者の世界を広げるか。これも小説の良し悪しを決める重要なポイントだと思うんです。そういう意味で「キノの旅」シリーズの作者時雨沢恵一氏は非常に尊敬している作家の一人です。

そこからヒントを得た切り方ですが、これが前編だとしたら後編はありません。この続きを決定事項にしてしまうと、野暮ったくなるように感じましたので。

ちなみにタイトルは「みずのとのみのもりや」と読みます。癸巳は今年の干支ですね。このネーミング方式なら毎年使い回せますが、来年の正月も守矢ネタを使うかは未定です。

というより一年前から練っていたネタというのは「正月に霊夢が守矢神社参拝に来る」という部分のみでして、他のシーンはそこに繋がるよう自然な流れを考えながら執筆しました。


割とどうでもいいですが、どうも私の脳内では諏訪子の声がインデックスと被るんですよね。

すると自然に諏訪子がインデックスに近い挙動を取ってしまいがちになりますが、キャラ崩壊しない程度に抑えています。諏訪子に腹ペコ設定はあまり似合わないような。

話がそれ始めましたのでこの辺で筆を置かせていただきます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

《1月1日 追記》

一番重要な干支が去年の物になっていました。

お詫びして訂正いたします。



……何という凡ミス。pixivにも去年の干支で上げてしまいましたよ。気付いたのは31日の夜。出先でのことなので直すこともできずに夜が明けてしまいました。恥ずかしすぎる。
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[ 2013/01/01 00:00 ] 東方小説 | TB(0) | CM(0)
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