Jr.の東方小説ブログ

新潟在住の東方ファンが自筆小説を公開するブログです。 週一程度の公開を予定しています。あとは徒然なるままに雑談でも。 ニ、三日に一度更新出来たら理想ですね。

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短編 「にとりと魔法の箱」

短編、始めました。

一度こんな出だしをしてみたかったんですよね。既に「ブログ、始めました」とか「小説、始めました」などのチャンスがあったのに……

そんなわけで一回読み切りの短編です。その代わり、若干今までの連載分より長めかもしれません。前回アップした最終回ぐらいの長さですかね。

今回の舞台は妖怪の山。求聞口授で触れられていた「河童バザー」を掘り下げてみました。

しかし求聞口授便利ですね。小説になりそうなネタがあちこちに転がっています。あ、もちろん求聞史記も愛読していますよ。

時系列は第122季。西暦だと2007年です。あまり意識する必要はないのですが、守矢神社が作られて間もない頃という設定がありますので。

それでは本編は続きから、スタートです!


「にとりと魔法の箱」

 妖怪の山は、幻想郷の中でも人間が滅多に立ち入ることのない秘境である。
 そこには河童や天狗といった、妖怪の中でも比較的力の強い者たちが独自の文化を築いている。
 しかし今日の山はいつもと少し様子が違う。河原には多くの河童がひしめき合い、その賑わいは明らかに非日常だ。
 それもそのはず。今日は、定期的に開催される河童バザーの日だからである。
 河原には多くの河童が茣蓙を敷き、各々自慢の品を売買していた。

「さあさあ皆さんご注目! にとりお手製魔法の道具だよ!」
 その中の一人、河城にとりも今日この日を待ち望んでいた。長期間研究を重ねていた発明品が遂に完成し、それをお披露目するのだから。
「にとりがすごいものを作った」という噂はバザーの開催前から河童中に広まっていたため、にとりの店舗付近には何人もの河童が人だかりを作っている。
 いい具合に人が集まったところで、にとりは改めて挨拶を述べる。
「えー、本日はお集まりいただきありがとうございます。これより発表会を始めさせていただきまーす」
 パチパチと拍手が起こる。にとりもまんざらではないようで、「どーもどーも」などと言いながら会釈した。
 ちなみににとりは「魔法の道具」を売り文句としていたが、これは本当に魔法の道具を作ったのではなく、「お前たちに原理を説明してもわからないだろう」という皮肉の意味合いがあった。
 それに気づいているのかは定かでないが、集まった河童たちの眼差しは机の上で布をかぶっている箱状の物体に集中していた。
 その箱は立方体で、一辺は一尺ほど。かぶせられた布は黒い絹製で、その光景はさながらマジックショーのようでもあった。ここから鳩でも飛び出すかもしれない。
「えーとまあ見て分かるとおり、これが今回の発明品です。説明より先に現物を見てもらいましょうね。……どうぞっ!」
 そういってにとりが黒い布を剥ぎ取ると、観衆は「おおっ」とざわめいて顔を近づけ――顔をしかめた。

 透明な水槽があり、その中にわずかに水が溜まっている。

 何とも言えない沈黙が場を支配する。にとりだけ一人上機嫌だ。
「えっと……解説をしてほしいのですが……」
 観衆のどこからか声が上がった。周りの河童もうんうんと頷く。
「そうね。これだけ見せられてもちんぷんかんぷんでしょう。これはね――水を操る道具なの!」
 にとりが高らかに宣言するが――依然、場の静かな空気は変化しない。
 河童と水は切っても切れない関係、いわば水魚の交わりである。にとりを含め、水を操ることのできる河童は大勢いた。
 それを機械に操らせるのは確かに凄いことかもしれないが、果たしてそんな必要があるのか。いやないだろう。凄いけど凄くない。それがその場にいる河童たちを反応に苦しめていた。
 しかしにとりはそんな空気をもろともせず、得意げな顔で語りだす。
「ふっふーん。確かに水を操ること自体は私でもできるわ。でもね、こんなことはできるかしら?」
 そう言って箱の裏側に手を回し、何やらカチャカチャと操作する。すると――

 箱の底に溜まっていた水が浮かび上がり、球体となって宙に静止した。

『……おおっ!』
 観衆たちが状況を把握するのにわずかな時間を要した。
 河童が己の力で水を持ち上げることはできるが、それは次第に重力によって下に落ちてしまう。しかしこの水は宙に浮いたまま微動だにしない。
 やっとこの発明の意味に気が付いた河童たちは、ざわめきながら箱の中を凝視する。ふよふよと空間に浮かぶ水の球は、河童たちの表情からにじみ出る好奇心を映し出していた。
「凄い……」
「どういう原理なんだ?」
「売ってくれ!」
「解体してみたい!」
 次々と上がる声を「はいはい落ち着いて」となだめるにとり。
「今日はそのつもりで出店したんだから。さぁ、どんどんご希望の金額を言ってって。一番高い人に売っちゃうわよー!」
 にとりが景気よく宣言すると、河童達は我先にと手を挙げた。



 今回も盛況であるバザーだが、それを河原沿いの道端から観察する人影があった。
「盛り上がっているようね」
「そうですね。私たちも行きますか?」
「神奈子ー行こうよー」
 洩矢神社の八坂神奈子、東風谷早苗、洩矢諏訪子である。河童バザーのことは前々から知ってはいたものの、直接様子を見に下りてくるのは初めてだった。
 河童や天狗とはすでに協定を結んであるので、外来種である神奈子たちが白い目で見られることはない。しかし、その賑わいようはいまだ「よそ者」という自覚が残っている神奈子にとって、決して居心地の良さそうな場所ではなかった。
「そうね。じゃあ早苗、何か神社の役に立ちそうなものがあったら買ってきてちょうだい。私はここで待ってるから」
「わかりました。……諏訪子様はどうされますか?」
 諏訪子の帽子に付いている目玉がパチクリと瞬きし、
「もちろん行くよ? だって面白そうじゃん」
「ではご一緒しましょう」
「早めに戻ってくるのよ。待つ方も退屈なんだから」
「了解です」
 そう言って早苗と諏訪子は河原へと向かい、神奈子は近くの岩に腰かけてあぐらを掻いた。

「ねーねー早苗、あれなんだろう?」
 諏訪子が指さす方向には、不自然な人だかりができている。早苗がそちらに目をやり、
「なんでしょう……オークションですかね?」
「バザーって最初から値段が決まってるんじゃないの? ……まあ人気商品なら競りになってもおかしくはないか」
「行ってみますか」
「うんそうしよう!」
 面白そうな事にはとりあえず首を突っ込むのが彼女たち流の人生の楽しみ方である。集まっている集団の後ろから覗き込むと、河童が透明な水槽のような物を売っているところだった。
 この箱が神社のため、つまりは信仰を集めるために役立つなら、早苗たちも入札してみる価値はある。しかし問題なのは、この箱がどんなものなのかさっぱり分からないことだ。
「なんでしょうね、あの箱」
「んー、ちょっと聞いてこようか」
 諏訪子がその小柄な体系を駆使して人ごみを割って進み、最前列へと顔を出した。
「ねえそこの河童、この箱って何が入ってるの?」
 にとりが気付いて返答する。
「おや、見かけない顔だね。この箱は物を入れるためのものではなく、物を制御することができるんだ」
 神様相手とは思えない砕けた口調だが、諏訪子は普段表に顔を出さないため、彼女を神様と認知している妖怪は少ない。また本人もそのことをあまり気にしていないようだった。
「物を制御?」
「そうなんだ。この箱は命令ひとつで自由に水を動かすことができる」
 そう言ってにとりは箱の裏側で操作し、中の水を浮上させてみせる。
「おおー凄い! 早苗ー、これはいい箱だよ」
 摩訶不思議な現象にすっかり見入ってしまっている諏訪子だが、対照的に早苗は呆れたような顔をしていた。

「あのー、諏訪子様? それ、中の水が浮いているわけじゃなさそうですよ?」

 早苗の言葉に、にとりがピクンと反応する。
「え、どゆこと?」
「えっとですね、たぶんそれは四つのモニタを繋ぎ合せて中に水があるかのように見せかけているんだと思います……」
 周囲の河童たちも動きを止め、その視線はすべてにとりに集中される。
「え、えーっと、何を言ってるの……かな? ほら、箱の中にはちゃんと水が……」
 にとりが箱に手を入れ、中の水を一すくいする。確かにそこには水が掴まれていたが、
「あ、ほら。今手が入ったのに横からは見えませんでしたよ」
 早苗の一言によってさらに状況は悪化してしまった。
 周りの河童たちもそのカラクリを確信したようで、にとりを見る目は疑惑に染まっていった。
 当のにとり本人はといえば、決定的な過ちに気づいてしまい、真っ白な表情で固まってしまっている。
「なんだ、インチキだったのか」
「帰ろ帰ろ」
 あっという間に人だかりは解消され、その場には早苗と諏訪子、にとりの三人が残された。
 諏訪子が気まずそうに口を開く。
「なんか……残念だったね。でもズルはよくないよ」
「……、ああっ、もう! なんでこの発明の凄さを分かってくれないかなぁ! こんなCG技術は幻想郷史上最高だってのに!」
 わしゃわしゃと頭を掻き乱すにとりに早苗は、
「なんかいろいろ諦めましたね。でもやっぱり嘘はいけないですよ。ましてそれでお金を稼ごうなんて」
「むぅ……でもこのモニタだけだと話題性に欠けるじゃん。お客に『おおっ』と言ってもらえるような何かがないと」
「でも嘘はいけないですね」
「しゅん……」
 落ち込むにとりだが、自業自得だろう。これに懲りて次からはまともな商売をすればよい。そう告げて帰ろうとする早苗と諏訪子だった……



「で、なんでそのモニタを貰ってきたのかしら」
 神奈子が呆れた目で早苗を見る。
「いえ、やっぱり放っておけなかったというか、せめてもの慰めというか……」
「やっぱりあの河童が可哀そうだったんだね、早苗」
「むむ……」
 早苗の両手には、件の四面モニタが抱えられている。結局、これは売り物にならないということで、早苗たちが引き取ることとなったのだ。
 これが神社の経営に役立つかと聞かれれば、なかなか返事に困るものだろう。
「……まったく、しょうがない。その辺に捨てれば祟られるかもしれないし、これは宝物庫行きね」
「物の祟りは怖いんだよー」
 こうして守矢神社の宝物庫に、新たな物品が追加された。物は大切にしないと祟られる。それは祟り神を統べる諏訪子がよく知っていた。同じような経緯で「宝物庫行き」になった物は決して少なくはないのだった……



記念すべき第一作でした。既に何本もの中編をアップしていたのであまり感慨深くはないですが。

妖怪の山では河童たちによるバザーが行われています。

場所が場所なので人間が出入りすることは少ないですが、非想天則にてパチュリーが珍しい石を物色したらしき記述もあります。幻想郷内での知名度は低くはないようですね。

河童関連で短編を書くなら一番やりやすい題材だと思いますので、もしかすると今後も河童バザーネタがあるかもしれません。

短編で次回予告をやることにはほとんど意味を感じないので、大まかな内容だけ。

次回のキーワード、「妖精たちの本気」。

アップは一週間後を予定しています。ご期待ください。
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[ 2012/10/12 17:45 ] 東方小説 | TB(0) | CM(0)
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